羽が生えた日/シルバーアクセサリー

むかしは自転車が大好きで、
仲間と一日中走り回っていた。
毎日が、新しい発見のある冒険のようだった。
なかでも障害物を並べたりジャンプ台をつくったりして出来た、
その日限りのコースを日が暮れるまで
走るのが楽しかった。
そんなときが一番、友達がいて本当にうれしい、
ありがたいと感じたものだ。
　
　ある日通りがかった駐車場で
すばらしいものを発見をした。

そこの駐車場は屋外ながらも広く、二つの高さの違う
駐車場は坂でつながっていた。
つまり高いところから自転車で飛べば、低い方の
地面につくまで、浮遊感を味わえるのだ。
　みんなで競ってジャンプしたね。
そのうち飛距離で競争しようということになって
今考えれば恐ろしいほどにスピードを出して、
天まで届けとばかりにジャンプを繰り返した。

何度か飛ぶうちに、コツをつかんだ私は
自信をもって空へと駆け出した。

それは
これから先、二度とないと言えるぐらいの
会心のジャンプだった。

地面を遠く離れ、周りの景色がゆっくりと流れていた。
肌に触れ、すり抜けていく空気さえもシルクの布を
羽織ったようになめらかに感じる。

「今、僕は風になった」そう感じたとき、
前輪がぽろりとはずれた。

フレームと後輪だけになった自転車は地面に
接触するなり大きくひしゃげ、
投げ出された私はアスファルトに顔面ダイブ。
あごに１０針縫うケガをした。

地面でもんどりうっているそんな私を呆然と見ていた仲間は
ハッと我にかえると壊れた自転車を脇にどかし
肩を貸してくれた。

　自分たちの自転車もその場に置き、負傷した私と共に
歩いて家に帰ってくれたその友達に今でも感謝している。
楽しいだけではなく、苦しいことも分かち合える。
真の友情に触れ、また一つ成長した、ある日の一ページ。