陽炎の道/シルバーアクセサリー

私には高校生一年の頃より愛用していたバイクがあった。
映画「AKIRA」にでていたアメリカンスタイルのバイクにあこがれ
バイト代をためて買ったのだ。

　アメリカンのバイクはふんぞりかえって乗るのがかっこいいとされている。
基本的に日本人は背があまり高くないので
（最近は 食事が欧米化してきたので、でかくなってきたが）
かっこよく乗りこなすには年季がいる。

私は背こそ低くはないが、軍人上がりの祖父の遺伝子を強く引いたのか
背筋がピンとしすぎていて、
仲間内から「姿勢良くアメリカンに乗るな！」と
非難を浴びることもあった。
健全な少年はアメリカンには乗ってはいけないらしい。

　ある日バイクに乗っていて新しい発見をした。
それは夏のとりわけ暑い日のことだった。

その時走っていた道は大型トラックがたくさん通る道で
たいがい日中は渋滞をしている。
二車線の道路だったのだが、そのときにかぎり
左からでは横抜けができなかった。
それでしかたなく、やってはいけないことだが
車と車の間、すなわち車線上を抜けることにしたのだが、
真夏日の大型トラックの間は、エンジンの熱やら排気ガスやらで
とにかく熱い。
そこで、少しでも風を受けようとスピードを出すと、ある異変に気がついた。
あまりの熱でトラックとトラックの間で「かげろう」が起こり、
その空間だけがゆがんでいたのだ。

　バイクのスピード感は
日常生活では人間が感じることの出来ない
時間軸の世界だと思う。

そんな歪んだ世界をスピードを出して走ったものだから、
だんだんと現実感が無くなっていっていく。
　とても不思議な世界を知ったとうれしい反面、
へたすりゃ大事故にも なりかねない。
止まった後で、ゾッとした。
そしてこの不思議な世界を「陽炎の道」と名付け、
永久に封印することにしたのだった。
　
　バイカーのみなさん、横抜けするときはスピードを落としましょう！