寒いのきらい/シルバーアクセサリー

それは若かりし頃の、高校生３年生だった私。

ある冬の、
それはそれは寒い
雨の日のこと。

「ねぇ、金属バット持ってエモノ探してたって、本当？」

机につっぷして
1時間目から3時間目までを
ノンストップ睡眠で安眠街道爆走中だった私に
クラスメートが恐る恐る尋ねてきた。

・・・なんのことだか、さっぱりわからん。

どうやら私のことが校内でウワサになっていたようだった。
そのウワサとは・・・

「雨で欲求不満になっている先輩が金属バット片手に
１・2年生の校舎を、 血走った目でエモノ探して徘徊している。」

・・・はい？

連日の部活疲れと
友達から借りたテレビゲーム一週間クリア宣言から
徹夜の続く自分の顔には、たしかに死相が出ている。
人相はすこぶる悪い。
が、しかし、なんでそんな話になっているのだ？

分析してみると、ことの発端はこう。

朝から雨が降っていた。
その日私が差していたカサは
ゴルフ場で差す玉避けの派手な「銀色のカサ」だった。
学校に着くと、部活の後輩に用があったことを思い出す。
さてさて、後輩のクラスはどこなのだ？
寝不足と連日の肉体疲労から
カサを肩に乗っけて、ダラダラと各クラスを覗き込む。
話を終えると、自分のクラスに帰り、就寝。

私は学校指定の制服を持っていなかった。
通っていた学校はちょっとは名の知れた進学校で
自由な校風が売りだった。
なので服装については、うるさくなかった。
分別をわきまえた人格形成を狙っていたのだろう。
在学当時、ルーズソックスが流行る前の世代において、
ボンタン履いて、革のライダース・ジャケット着て
バイク通学していた。
（後に担任教師にバイク通学がバレ、殴られる）
その上、今でこそ珍しくないが、当時は珍獣扱いだった
ヒゲを生やした高校生だった。

まぁなんだ、日頃の行いが悪いと、こういったウワサが立つのだね。

だけど言わせて欲しい。
「銀色のカサ」は、ゴルフ用のカサは大きくて濡れないから。
「血走った目」は生まれつきの結膜炎と寝不足。
「フラフラとラリったように徘徊」してたのは部活疲れ。
「ボンタン」は足首窄まっているので暖かいから。
「革ジャン」はコートよりも暖かいから。
「バイク通学」をしていたのは極度の乗り物酔い体質だから。

そう、わたしは、ただの「おぼっちゃん」。
不良ではないのだ！

　

じゃあ、「ヒゲ」は？

・・・ヒゲはね、ヒゲは生やしてみたら、・・・暖かかったから・・・

(-。-;)


かくして
そのウワサがたってから

「野球部よりも金属バットが似合う男」
という、不名誉な通り名が
卒業まで付けられることとなった。