失われた日々、または笑い声のある風景/シルバーアクセサリー

僕にも泥にまみれ、ひざから血を流し、友と笑い会った
毎日に充実していた幼少の日々があった。
その頃の夢は刑事になること。
正義の味方になりたかった。
ただ、こういった時期の「未来」というものは
ただ漠然としているだけでなく
無責任な一面もある。
ただ、だからこそ「夢」を強く語れた気がする。
今でも夢は語れるが、
同時に冷静に未来を分析する別の自分もいる。

俗に言う「年齢」とは正確には「身体年齢」である。
またそれとは別に「精神年齢」というものもある。
「身体年齢」は時間に比例して増えていくが、
「精神年齢」は時間によって増えていくわけではない。
「精神年齢」を決めるのは「知識」の量だ。
よって、精神年齢の上では老いも若きも関係無いのである。
年をとっていても、向上心の無い人間は
１０代の人間よりも人格形成がなされていないこともある。
要は、毎日どれだけ「考えて」いるかだ。

しかし、精神年齢の高いものが優れているわけではない。
人それぞれの価値観があるし、
一生命体という大きなカテゴリーの中では、そんなものは無意味だ。
知識は「人として」生きるためのものであるから。
幸せを感じたいがために、必要なだけ知識を蓄えるのだ。

ただ、知識のあるものが必ずしも、幸せになれるとは限らない。
小さな頃、虫を捕まえて遊んでいた少年が、
大きくなってその対象を人間にする。
「捕らえる」という行為の中には様々な「狂気」が含んでいるから、
倫理的ではない行為に、発展する可能性も秘めている。
好奇心が旺盛であるがゆえに欲望が加速する。
だからこそ、知識は蓄えるだけでなく、
消化しなければならない。
考えるということで。
まぁ、これらはあくまで僕個人の「哲学」のようなものだが。


なぜ、こんなコトを思うに至ったのかというと訳がある。

見たいテレビがあったので
「わーい、わーい！」と
ふざけて飛び跳ねていたところ、
勢い余ってドアの鴨居に頭を打ち付けた。

体は大人だけど、精神の根本的な部分は今だ未成熟。
「大人になるって、辛くて悲しいんだな」
床にうずくまりながら、ふと思った。
家族のけたたましいまでの笑い声が部屋にこだまする。

僕の頭にはうっすら、血がにじんでいた。