深夜の客/シルバーアクセサリー

まんが喫茶でバイトをしていたときのことです。
私は深夜番として働いていたのですが、
その日は平日の勤務でした。
平日ということでお客は少なく、
深夜３時の段階で私を含め３人しか店内にいませんでした。

営業中にお客が２人しかいないこと自体、「店」としてかなりヤバイですが、
まぁなにせ深夜ですから、普通ならみんな寝てます。
そう、お客のうち１人は女性で、あられもない姿で爆睡中でした。
しかし問題なのはこの女性ではありません。
こういう人はしょっちゅういましたから。

ことの発端は残りの一人、サラリーマンのおじさんの鼻をすする音でした。
その時、私はかなり眠く、睡魔と格闘中でした。
そこに何度も何度も鼻をすする音が聞こえるのです。
気になりましたね。
ソッと店内をのぞくと、まんがを両手で丁寧にもったおじさんが
いぶかしげな顔をしながら何かにおいを嗅いでいるようでした。
しばらく嗅いでいたのですが、おじさん何かに気がついたようです。
辺りを確かめたあと、おもむろに靴を脱ぎ、
こわごわと足の裏を顔に近づけていきました。
ガタッ！
デカイ音とともにおじさん、大きくのけぞりました。
におっていたのは自分の足だったようです。
相当臭かったんでしょう、あわてて靴下を脱ぐとそれをゴミ箱に捨てていました。
それを見ていた私ですが、先ほどののけぞったときのおじさんの顔が忘れられません。
人間て本当にクサイにおいを嗅いだとき、白目むくんだね。
そんな顔をされたらぜひ自分も嗅いでみたい、そう思ってしまうところが
探求心のつよい人間の悲しい習性です。
私は行きましたね、なにくわぬ顔をしてゴミ箱に。
そしてゴミ袋を替えるふりをして顔を近づけると・・・。
卒倒するかと思ったね！
鋭利な刃物のようなにおいでしたよ。臭すぎて、一瞬、嗅いだんだか
鼻の奥にアイスピックが飛び込んできたのかわかりませんでしたよ、ええ。

こみ上げる嘔吐感と喉元で格闘しながら、日本のお父さんて偉大だなって思いました。
たぶんその人独身だと思うけど。