気を抜いた話/シルバーアクセサリー

　それはごく有り触れた日常で起きました。
　
その時の私は、ちょうどシルバーリングの溶接していました。

シルバーの溶接には「銀ロウ」というものを
高温で溶かし接着するのですが、その際にはバーナーを使うのです。
シルバーを熱し、真っ赤になる頃、
「銀ロウ」が溶けるのですが、
その時の真っ赤なシルバーは、内面から輝くような
夕日の様な赤なのです。

　私だけなのでしょうか？
頭と体が別々の事をしていますと
催眠状態のようになるのです。
つまり、別世界に行っちゃうのです。
　夕日のような赤はそんな私を
不思議の国へ連れていっちゃいました。
なぜアリスや白うさぎが現れなかったのか不思議なくらいの勢いで
私の意識はぶっ飛んでいたのです。

　そんな中も、銀はドンドン赤くなり、表面が溶けて来たのです。
でも、私ときたら催眠状態・・・
「銀、キレイ・・」などと思っているうちに
シルバーの指輪はどろどろ。
バブルスライムみたくなっちゃってます。

　そこまでなって、はじめて「ヤバイ！」と我に返りました。
しかし、後の祭りです。
冷えて固まったバブルスライムは
はぐれメタルになりました。

　2時間やっていたことが水泡に帰し、
脱力感でいっぱいに なったため、
いっそ、ふて寝してやろうかと思ったのですが、
子供ではないので、30分テレビを見ることで自分をなだめました。

今日の教訓。
仕事中は気を抜かない。